ようやく桜の蕾が開き始めて、心華やぐ季節となりました。本日4月3日お蔭様で当院は開院5周年を迎えます。いつもクリニックに通ってくださる患者さま、そして支えてくださっている全ての方々に心より感謝いたします。5周年は通過点にすぎませんが、開業した頃からの一つの目標だったので、こうやって無事に迎えられたことは感慨深く思います。

先日一足早く、私の大好きなレストラン、アンビグラムでスタッフとささやかなお祝いをしました。オーナーの米津さんとは、知り合ってからもうかれこれ30年になるでしょうか。今から20年以上前、当時米津さんがいらしたお店、トンマズィーノには本当によく通っていました。いつもお任せでお願いしていたお料理は、ただ美味しいだけでなく一品一品に力強さと感動がありました。厨房でシェフが黙々とお料理を作っている姿も印象に残っています。米津さんの接客は程よい距離感を保った心地良いもので、彼と話すことが楽しく、それがお店に通いたくなる理由の一つでした。トンマズィーノにはもう一人阿部さんというスタッフがいらして、人懐っこい阿部さんは、米津さんとは少し違うスタイルでの素敵な接客をされていました。お二人は、いつ何を聞いても的確な説明や提案をしてくださり、いつも感心していたのを覚えています。お料理が美味しいレストランは世の中にたくさんあるけれど、それだけではまた行きたいという気持ちにはなりません。トンマズィーノには、スタッフ全員のプロ意識やおもてなしの心があり、そして何時間でも長居してしまいたくなるような居心地のよい空間がありました。

医師になり10年以上経って専門に美容医療を選択し、その後もずっと勤務医として働いていました。でも「何かが違う」という気持ちがいつもどこかにありました。後から考えれば、私がやりたかったことは、私がいくら一人で頑張っても成し得ないことだったからです。医師として良い医療を提供するのは最低限必要なこと。でも、それだけでは患者さまはまたいらしてくださらないと思います。そこにスタッフの力が加わり、そして、安心して治療を受けられる温かく心地良い空間も必要なのです。クリニックへいらっしゃること自体を楽しみに感じてもらえるような、そんな場所を作りたくて開業する決意をしました。開院以来私たちは、たとえそれが完璧でなくとも「どんなときでも、そのとき自分にできる最高のパフォーマンスを発揮する」というモットーで日々の診療に取り組んでいます。もちろんまだまだ道半ば、この5年でどれくらい成長できたのかはわかりません。今日からまた新たな気持ちで、ずっと変わらない一つの目標へ向かって、これからも走り続けていきたいと思っています。ここへ来てよかったと一人でも多くの患者さまに感じていただけるように。この小さなクリニックが、私にとってのトンマズィーノのように、もしどなたかの特別な場所となってくれればこんなに嬉しいことはありません。