最近、肝斑に関する仕事が続いたので、ここのところずっと肝斑について考えていました。肝斑は私たちアジア人に多く、発症頻度は5~30%などの報告がありますが、実際診療をしていますと、30~40代の女性では70%くらい、50代でも50%くらいはいらっしゃるのではないかと思います。そして、肝斑には多くの悪化因子があり、良くなったり悪くなったりを繰り返します。悪化因子には、ホルモンや日光、摩擦などがあげられますが、まだまだわかっていないことも多い疾患です。肌の摩擦については、あまり意識していらっしゃらない方が多いですが、洗顔時にごしごしこすったり、うつぶせ寝やマスクの影響でも悪化しますので、とにかく肌は優しく扱うことが大切です。患者さんにいつもお話していますが、私も肝斑があります。そして私の肝斑も、薄くなったり濃くなったりを繰り返しています。治療の目的は、治すことではなくて、できるだけ良い状態へコントロールすること。完治は難しいけれど改善はしますので、気になる方は、あきらめないで是非治療を受けられてみてください。治療には多方面からのアプローチが必要です。つまり、内服薬だけとか、レーザー治療だけでは、効果が一時的で早期に再発する可能性も高くなるため、内服薬や外用薬、ケミカルピーリング、レーザー治療をうまく組み合わせて行います。特にレーザー治療は、不用意に行った場合には、肝斑を悪化させたり合併症を作ったりする可能性がありますから、状況をよく見極めて慎重に行う必要があります。
先週末、Asian Congress of Dermatologic Surgery(アジア皮膚外科学会)のシンポジウムで、「肝斑のレーザー治療における問題点とその回避・対処法」というテーマで講演し、私が行っている治療についても紹介しました。私のレーザー治療は、Qスイッチアレキサンドライトレーザーを用いたレーザートーニングで、一般的なYAGレーザーのトーニングとは異なります。肝斑に過剰な熱影響を与えないよう、照射方法も一定にし、低いフルエンス(出力)を確実に維持した、安全かつ効果の高い治療法だと思っています。この治療は、しみやきめ、毛穴の改善など、いわゆる肌の若返り治療を兼ねているため、大変多くの方に受けていただいていて、当院にはレーザートーニングのファンの患者さんがたくさんいらっしゃいますし、私自身もとても大切にしている治療法です。
学会では、肝斑治療について、先生方とディスカッションし知識をアップデートできましたし、新しい治療についても良いアドバイスをいただいたので、今後の展開にちょっとわくわくしています。準備が大変でしたが、無事に終わって、今はしばし解放感に浸ってます!